もう一度飲みたい至福のコーヒー
私は、二ヶ月前まで製菓・製パン材料の卸をしている企業に勤めていました。製菓・製パンの材料を取り扱っているだけあって、お得意先様は、ケーキ屋さんやパン屋さんが主で、地元のほとんどのお店と取り引きがありました。
そして、ほとんどのお店が購入してくれていたコーヒーがあります。それは[後藤珈琲]という会社のコーヒーです。この会社は、自らコーヒー豆を自家焙煎していて、さまざまな種類のコーヒー豆を取り扱っています。
私が勤めていた会社の社長もこのコーヒーのファンで、会社の来客者には後藤珈琲のコーヒーを出していました。私は社長秘書をしていたので、毎朝会社へ出社すると、専用のコーヒーマシンを使ってコーヒーを煎れるのが役目でした。そして私にとって至福の時だったのが、煎れ立てのコーヒーを仕事前に飲む事でした。
いつも同じ部署の仲の良い先輩と、仕事前に炊事場でこっそりとコーヒーを飲んでいました。私は以前どちらかというとコーヒーは苦手だったのですが、後藤珈琲のコーヒーと出会ってからコーヒーが大好きになりました。
会社用のコーヒー豆は、スペシャルブレンドといって、社長自ら好きな豆をブレンドして作られていたので、世界にたった一つの味でした。風味も香りも豊かで、どこのコーヒーにも負けない味です。会社を退職した今、もうそのコーヒーを飲む事は出来ませんが、私にとって忘れられないとっておきのコーヒーとなっています。