ブラックコーヒーが美味しいと思った日

社会人になってから、直属の上司と一緒に飲んだブラックコーヒー。

それまではブラックコーヒーを飲んだ事はありませんでした。会議室の奥の食堂から、コーヒーを運んできてくれて、2人で会議室で話しながら、飲みました。何故か砂糖もクリームも持ってきていません。上司がブラックコーヒー派だったからだそうです。「お砂糖とクリームを持ってこようか?」と上司。「いえ、結構です」と私。

まだ学生を抜け出ていない私は、ポカンとした顔で少し緊張して座っていました。作業はこれで終了したという話と今後の予定などについて話しました。木目の格調高い古びた会議室のテーブルと椅子は荘厳でした。

コーヒーを一口飲むと、苦い、しかし、インスタントなのかレギュラーなのかは分かりませんが、美味しいと感じました。学生から大人の社会に入った記念すべきブラックコーヒーの味でした。

それまではコーヒー自体苦いのか甘いのか分からない、気持ちが悪くなる時もあるほどに、コーヒーは少し苦手でした。しかしこうして会議室でブラックコーヒーを初めて飲んでみて、美味しいと思ってしまいました。

何故ブラックコーヒーを美味しいと思ったのでしょうか。時々思い出しては考えています。ビジネスシーンにコーヒーは付き物です。会議室ではコーヒーが運ばれ、商談にも秘書がコーヒーを持って現われます。

黒い液体が入った白いカップ、現代では、紙コップに注がれたコーヒーですが、何とも魅力的な存在に映ります。シュガースティック、クリーム、といった余計なものを持たず、お盆に紙カップを2杯載せて運んできた上司ですが、その簡素さが美味しさを引き立たせたのではないでしょうか。

スティックシュガーの紙を破り、クリームの蓋を剥がしてその辺に乱雑に置いたテーブルでは、折角のコーヒーの魅力も半減します。紙コップに注がれた熱いコーヒーと、お盆だけが置かれたテーブルで飲んだブラックコーヒーだからこそ、美味しく味わう事が出来たのだと思います。

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