心を込めていれてくださった一杯のコーヒー
私はもともとコーヒーよりも紅茶が好きでした。ある日仕事で知り合ったイタリア人からおいしいコーヒーの飲み方を教えてもらい、そこで初めて知ったコーヒーの美味しさにすっかりはまってしまい、それからはコーヒーが大好きになりました。
いろいろな豆を試してみました。でも、もともと凝り性ではなかったので、豆等にはこだわらず、挽いてあるものを購入して飲んでいました。いろいろ試して気がついたのは、スーパーがPBとして販売している豆が意外と美味しかったということ。有名企業が販売しているものよりも香りが高かったり、味も濃厚だったりします。これは色々と試してみて気が付いた収穫でした。
以前勤めていた職場で、上司がとてもめずらしいコーヒーメーカーを持っていました。昇進のお祝いに友人からプレゼントされたそうなのですが、なんでもその機械を使ってコーヒーを入れるのはとても手間がかかるから、ここ2~3年程使っていないとのことでした。
その時は、そのメーカーで入れたコーヒーを一度飲んでみたいです。と話ついでにお伝えして、その場を去りました。
ある日、上司から連絡があり、居室を訪問すると、コーヒーの香りが部屋に充満していました。さらに驚いたことに、首にタオルを巻いて額に汗をかきながら「きれいに掃除してから入れたから、どうぞ」と、言って、そのコーヒーメーカーを使ってコーヒーを用意してくれていたのです。
普段、身だしなみに気を遣う方が、首にタオルを巻いて汗をかいて、コーヒーを用意してくれた、その姿にとても感動してしまいました。もちろん入れてくださったコーヒーの味もそれは格別なものでした。そこでの勤務は、とても大変なものでしたが、この時の出来事がずっと心の支えになっていたような気がしています。
今は転職してしまいましたが、コーヒーを飲むと、時々その時の記憶が思い出されます。それから後もいろいろな場面でコーヒーを飲む機会はありますが、あの時のように感動しながら飲む機会はそうそうありません。