好きな人に初めて貰った缶コーヒー
あれはまだ私が16歳、高校一年生の時の事です。初めてのアルバイトで、違う学校に通う2つ上の男の子を好きになりました。彼は優しくて楽しく、誰からも好かれている、そんな先輩でした。
ある日、バイトが終わった私は、バイト先の前のベンチに座っていました。しばらくすると、彼が従業員出入口から出てきました。実は私は彼もその時間で終わりなのを知っていたのです。私に気付くといつもの笑顔で「お疲れ様~」と声をかけてくれます。私も笑顔で「お疲れ様です」と返すと、少しの会話がかわせます。今日の仕事はどうだったとか、学校でこんな事があったのだとか。
それがただ嬉しくて楽しくて。そんなささやかな時間が幸せでした。寒かったある日、彼が私に缶コーヒーを買ってくれました。温かい、初めてのプレゼントなんて大袈裟だけど、嬉しすぎて勿体無くて飲む事はできず。大切に持って帰ったのでした。
ある時、私は体調を崩し、1ヶ月以上もバイトを休む事になりました。
やっとの事で回復し、久々に彼に会えるとウキウキ気分でバイト先に向かう私。すると衝撃の事実が!彼に彼女が出来ていたのです。それも同じバイト先で、彼と同い年の女の子。彼女とも仲のいい私は、かなりのショックでした。
後日、彼女からさらに衝撃の告白をされました。私と仲がいいのを知っていたので、私には別に好きな人がいるという噂を流したのだと。なぜわざわざそれを私に報告したのかは不明。さらに後日、彼に実は君の事が好きだったが、好きな人がいると聞いて諦めたのだと聞かされました。
この話を聞いて、すべてがバカバカしくなっちゃいました。噂を流した彼女も、それを聞いて私に確認もせずあっさり他の子と付き合う彼も。
あ~、アホらしい。勝手にやってとこの時初めて彼に貰ったコーヒーを飲み干してやりました。コーヒーの味は思い出せないけど、美味しいと感じた記憶がない若かりし頃の思い出です。