ハワード・シュルツ氏の「スターバックス・リザーブ」への専念は何をもたらすのか

2016年11月30日、アメリカのスターバックス本社CEOであるハワード・シュルツ氏が2017年4月でCEOの座を退き、常勤会長になることを発表しました。

日本のマスコミというのは情報産業でありながら、情報の取扱がいいかげんなのが常。この件についてもスターバックスの「創業者」であるシュルツ氏が引退などと報じている国内メディアがいくつかありました。

しかし、シュルツ氏はスターバックスの創業者ではありません。そもそもスターバックスは、シアトルの小さな自家焙煎のコーヒー豆ショップであり、若き日のシュルツ青年はそこの社員に過ぎませんでした。

その後、イタリア出張の折に現地のエスプレッソ文化を知ったシュルツ氏は、スターバックスを退社。

自らエスプレッソ主体のカフェスタンドを作り、これが当たったためスターバックスを買収し、そして現在の自社焙煎の豆を使うカフェのスタイルに改めて今に至るわけです。

これはかなり有名な話であり、普通はシュルツ氏をスターバックスの創業者などとは言いません。日本のマスコミが流す「情報」とは、概してこの程度のもの。

日本のマスコミの批判はさておき、シュルツ氏はCEOを退いた後、ハイエンド事業である「スターバックス・リザーブ」に専念するとのこと。

「スターバックス・リザーブ」は、日本の一部店舗でも提供されている、希少なコーヒー豆及びその豆を使ったコーヒーを販売するサービス。

通常のスターバックスのカフェメニューが200円台~400円台程度なのに対し、リザーブのメニューはショートサイズの最低価格帯が700円台。選ぶ豆によっては1,000円以上のものも。

リザーブではエスプレッソマシンやドリップ方式ではなく、クローバーという特殊なマシンもしくは、コーヒープレスで淹れたものが提供されます。

クローバーというのは蒸らしたコーヒーを真空で吸い出して抽出するというもの。コーヒーに含まれる成分を抽出というより搾り取る感じになりますから、雑味の少ない良質な豆しか使えません。

その他、リザーブ提供店舗のさらに一部では、サイフォンでのサービスも実施。コンセプトは希少かつ高品質の豆を使い、そのおいしさを最大限に活かすという点にあります。

日本ではそうした「プチ贅沢感」が受け入れられ、サービス提供を行う店舗も増えています。

シュルツ氏が、この「スターバックス・リザーブ」事業の中でも今特に力を入れているのが「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」。これは、すでにシアトルに1号店がオープンしている、焙煎施設とカフェが併設してあるというスタイルの店舗のこと。

今後はまず上海、そしてニューヨーク、次に東京・中目黒にもオープンする予定。昨年シュルツ氏はそのプレゼンテーションを行うために、上海と東京を歴訪。

東京で行ったプレゼンテーションでは、シュルツ氏はこの「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」を『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカの工場に例えていました。

もちろんウンパ・ルンパが働いているわけでもリスが選別しているわけでもないでしょうが、コーヒー豆の焙煎をエンタメ的に見せながらコーヒーを味わえるという店内の様子が想像できます。

シュルツ氏のプレゼンテーションを直接見たわけではありませんが、プレゼンテーションやそれに伴い行われたインタビューなどの記事を見て思うのは、文面からでもシュルツ氏が非常にこの事業に「わくわく」しながら取り組んでいるのが伝わってくるということ。

また日本のマスコミの無知さに触れなければなりませんが、シュルツ氏がリザーブ事業に専念するということを伝える記事において、シアトルのロースタリーでサイフォンで淹れたコーヒーを1杯12ドルで提供していることを挙げ、まるでそれが最近始まった新規事業であるかのように伝えているものがありました。

しかし、ロースタリー自体は新たな試みとしても、リザーブ自体は上に述べたようにすでに日本でも行われているサービス。

そして、日本円にして1,000円以上するというハイエンドメニューもとっくに投入されており、浸透してきつつあります。

ですから、そこを見て「業界改革」かのように言うのはあまりに情報が遅過ぎる上、スターバックスの現状について疎過ぎでしょう。

今注目すべきは、そのようなことではなく、シュルツ氏がリザーブ事業に専念することにより、日本のコーヒー文化にどのような変化がもたらされるかではないでしょうか?

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