コーヒーの1stから3rdに至る流れのおさらい

某「食ビジネス」のポータルサイトというところにあった、コーヒーに関する記事を読んだのですが、コーヒーのファーストウェーブからサードウェーブまでの流れや、「新ワード」の解説が間違いだらけだったので、正しく解説する記事を書こうと思いました。

ファーストウェーブからセカンドウェーブまで

最近はそれほど騒がれてませんが、サードウェーブコーヒーの大手「ブルーボトルコーヒー」も、着実に日本に支店を増やしていっているようです。

コーヒーにおける「ウェーブ」というのは、いわばコーヒーブームの段階といってもいいでしょう。

ファーストウェーブは、言ってみればコーヒーの生産技術と流通革命がもたらしたブームでした。

19世紀後半、イギリス人は植民地のインドやスリランカで紅茶を大量生産しましたが、アメリカ人はアフリカでコーヒーの大量生産を始めました。

同時に船舶や鉄道などの輸送インフラが発達することでアメリカに安価なコーヒー豆がもたらされるようになり、コーヒーは一般庶民が気軽に購入できるものになったのです。

件の記事ではそれを「アメリカンコーヒー」が普及したと書いていたのですが、そもそも「アメリカンコーヒー」なるものは日本でできた造語であって、そんなものはアメリカにはありません。

日本人が言う「アメリカンコーヒー」は、単に「薄いコーヒー」を指しているのに対し、ファーストウェーブの時代のアメリカで好まれたのは、浅煎りのコーヒー。

ただし、ファーストウェーブで語られるべきは、味ではなく産業構造のドラスティックな変化自体でしょう。

続いてセカンドウェーブ。これはイコールシアトルスタイルのエスプレッソドリンクだと言っていいでしょう。その代表がスターバックス。

ただ、スターバックスは確かに1971年創業ではありますが、創業当時はただのコーヒー豆ショップでした。そこに1982年に入社したのがハワード・シュルツという青年。

ハワード青年は出張でイタリアに行った時、当地のエスプレッソ文化に衝撃を受けます。そして、一度スターバックスを退社し、深入り焙煎のエスプレッソを中心として販売するカフェを開きました。

その味がシアトルの若い世代に受けて業績を伸ばし、彼はスターバックスを買い取って、現在につながるカフェとして運営を開始。これが1987年のこと。

ですから、セカンドウェーブが1971年に始まったかのように言うのは大きな間違い。

セカンドウェーブは、それまで好まれていた浅煎りコーヒーとは真逆の、深煎りコーヒーの文化をアメリカに広めるとともに、コーヒー産業全体のクオリティを高めることにも貢献しました。

サードウェーブ

それまでの2つの波に続いて起きたのがサードウェーブです。サードウェーブの舞台はサンフランシスコです。

サンフランシスコの一部を含むシリコンバレーの近くで、ある流れが起きました。

それは、システム化されて広まったシアトル系カフェとは異なり、コーヒー豆の産地や品質を厳選し、客の好みに合わせて一杯一杯丁寧にコーヒーを淹れるというもの。

セカンドウェーブは確かにアメリカのコーヒーの品質を高めました。しかし、イタリア式のエスプレッソは濃すぎるので苦手というアメリカ人が多く存在していたことも確か。

そこで、あまり深く焙煎せず、しかしファーストウェーブの時代とは異なり品質も良いというコーヒーが、シリコンバレーのIT企業で働く人々を中心に受け入れられて広まりました。

これがサードウェーブです。日本の喫茶店に影響を受けたというブルーボトルコーヒーも、その流れの中の一部であり、サードウェーブ=ブルーボトルコーヒーではありません。

シアトル系チェーン店も、様々なテイストとオプションを用意し、ある程度客の好みに対応できるようになっています。

とはいえ、それは企業ごとに画一化されたもの。同じチェーンの他の支店に行っても、ほぼ同じ味を味わえるというのが強みでもあり、また弱点でもありました。

一方サードウェーブは、思想、もしくは文化です。豆にこだわる、一杯ずつ丁寧に淹れるというコンセプトは同じでも、店ごとに味もスタイルも違います。

だから、ブルーボトルコーヒーだけでサードウェーブをわかった気になるのは間違っています。

注目の新ワード?

件の記事でまずすごいなあと思ったのが、これから訪れるであろう「フォースウェーブ」の「芽」となりうるという「最新ワード」として扱われていたもの。いくつか挙げて解説しましょう。

・コールドブリュー

昨年ニューヨークで話題になったという“新しい”コーヒー。聞きなれない言葉だとは思いますが、実はこれ「水出しコーヒー」のことです。

水でじっくり抽出したコーヒーは、雑味がなく清澄なおいしさがあります。アメリカでは確かに“新しい”味なのかもしれませんが、そもそもは戦前にオランダ人が考案した歴史ある淹れ方。

日本でも何十年も前から行われていて、専門店もあるし、家庭用水出しコーヒー機だって売られているほど、コーヒー好きの間ではポピュラーな淹れ方の一つ。

・デカフェ

私が知る限りにおいては、カフェチェーンでデカフェ、つまりカフェインレスのコーヒーを出し始めたのはスターバックスが最初。もっとも、日本では法律的な理由でデカフェはドリップとカフェミストのみになるようですが。

日本には変にカフェインに敵対心を持つ人も多いので、デカフェという言葉も何年も前から広まっています。別に次の流れで注目される最新ワードなどではありません。

・フェアトレード

大量消費社会では、貧しい途上国から商品を安く買い叩いて輸入するということが行われています。そのため、原産国の労働者の生活は貧しいままになっています。

そうした格差をなくすため、その商品に対して正当な価格で買い取り、現地の労働者に還元して貧困を少なくしていこうというのがフェアトレードです。

これは、スターバックスが企業理念として大きく掲げていること。スターバックスのコーヒーが割高になるのは、フェアトレードによりコーヒー豆を仕入れているのも理由の一つ。

また、サードウェーブの範疇に入るカフェの多くもフェアトレードをしています。

コーヒーのみならず、紅茶やその他の農作物をフェアトレードで仕入れている会社は、日本ではまだまだ少ないですが、増えてきています。

フェアトレードというのは、スターバックスに多少なりとも興味がある人ならば、20年前から耳慣れた言葉です。

フォースウェーブはまだ兆しもない

次に来る波は、サードウェーブに顧客へのコミュニケーションをプラスしたものだと言っている人がいるようです。しかし、これはなんでもマニュアル化する日本の外食産業の視点から出た妄想でしかありません。

なぜならば、シアトル系もサードウェーブも、本場アメリカではそもそも顧客とのコミュニケーションを重視しているからです。

例えばスターバックスのソイラテやフラペチーノ、デカフェメニューは、現場が顧客とのコミュニケーションで要望され、それを上申して作られたものです。

サードウェーブは、日本では結局単なる店舗経営のスタイルの一つとしてしか見られていませんが、そもそもはそれぞれの店舗が顧客の好みに合わせて丁寧に淹れていくという、コミュニケーション重視の姿勢から発展したカルチャーなのです。

日本人が上辺の知識で想像した「フォースウェーブ」など、まだ兆しもないというところが事実でしょう。

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