日本にやってきたブルーボトルコーヒーの強みとは?
“サードウェーブコーヒー”とは、コーヒー豆の生産地や素材などにこだわり、手作業で時間をかけて1杯ずつ丁寧に淹れるスタイルをいいます。その代表的なコーヒーショップとしてアメリカの西海岸やニューヨークで人気のあるBlue Bottle Coffee、その日本1号店である「清澄白河ロースタリー&カフェ」が2015年2月6日に東京都江東区にオープンしました。
同社はアメリカのカリフォルニア州オークランドで2012年に創業し、現在までに全米各地で16の店舗を経営しています。2015年は店舗の拡大を目指す方針として同社は、満を期して初の海外進出先として日本を選びました。今年は新たに12店舗増やす計画をしていますが、そのうち2店舗が清澄白河と3月にオープンした青山店。
なぜ日本を選んだのでしょうか。それにはBlue Bottle Coffeeの戦略というよりも創設者であるジェームス・フリーマンCEOの思い入れによるものが大きいでしょう。フリーマン氏は音楽団の演奏旅行で来日した19歳の時、日本の喫茶店文化に触れたといいます。そしてそのときの体験がBlue Bottle Coffeeに影響を与えていると言われています。
「サードウェーブ」という名前で表すと新しいトレンドである印象を受けますが、実はその手法は日本で昔から喫茶店でごく自然に実施されていたコーヒーの提供方法なのです。そういう意味で考えると、Blue Bottle Coffeeの日本進出は日本で生まれたコーヒー文化がアメリカで花開き、時間を経て日本に戻ってきたと言えるかもしれません。
新しい出会いを提供したい
Blue Bottle Coffeeの日本法人ブルーボトルコーヒージャパンは、バリスタ8人を含む約20人のメンバーで事業をスタートしました。
プロダクションマネ―ジャーの森麻美さんは中核メンバーの1人で、焙煎や材料の仕入れ、店舗で使用するカップなどの品質管理に関わる分野の統括責任者です。森さんは以前、外資系の大手コーヒーチェーンに10年以上勤務し、その後コーヒー豆の輸入専門会社でコーヒー生産地を訪問した経歴もあります。このような経歴からいわばコーヒーのスペシャリストとしてブルーボトルコーヒーに入社しました。
同社の品質管理はアメリカと同じ基準で実施しています。例えばコーヒーの生豆一粒ごとの水分含有量や焙煎にかける時間、温度、焙煎後の豆の色など様々なデータをひとつずつ測定し集めたスコアシートを随時オークランドにある本社やロサンゼルス、ニューヨークなどの各拠点と共有。そこでOKが出なければ、次の工程に進めず豆を挽くなどできなくなります。このように徹底したデータ測定やグローバルレベルでの緻密な品質管理がBlue Bottle Coffeの強みであると言えるでしょう。
また、このように採取したデータは品質管理を行う担当者だけでなく、バリスタを含めた全スタッフが閲覧可能。全スタッフのコーヒーに対する知識の蓄積にもつながると言います。
森さんは「コーヒーは多様性がある食材」と言います。レストランや専門店、コンビニエンスストアや自宅など今ではいつでもどこでもコーヒーを飲むことができるし、一口にコーヒーといっても人それぞれで好みが異なります。ブルーボトルコーヒーでは来店する日本の顧客に対して、コーヒーを通じて新しい出会いや価値観を提供できれば嬉しいと森さんは考えています。
コンビニコーヒーの市場参入など、いまではコーヒーに接する機会が今までと比べて格段に増えています。その中でブルーボトルコーヒーは顧客のニーズをどのように取り込んでいくのか、日本でのビジネス展開についても今後注目が必要でしょう。