今後のコーヒー市場における需給バランスの予想
世界のコーヒー消費量は増加の一途をたどっており、国際コーヒー機関(ICO)の予想によると向こう5年間で需要は25%近く伸びるそうです。
「消費はインド、中国、それに中南米の消費傾向の西洋化が続いているのに伴って増えている」とICOのロベリオ・シルバ事務局長は指摘しています。
ケニアの首都であるナイロビで開催されたアフリカ・ファインコーヒー会議において、シルバ氏は2020年までに世界のコーヒー需要は1億7,580万袋に達するとの見方を示しました。現在の需要は1億4,160万袋ですから大幅な増加となります。コーヒーの1袋の重量は約132ポンド(60キログラム)です。
現在、世界のコーヒー供給量は減少しており、これに伴ってコーヒーの相場は上昇し、2014年は数年来の高水準に上昇しました。これは世界最大のコーヒー豆生産国であるブラジルで記録的な干ばつが発生したことが影響しています。
シルバ氏はブラジルの干ばつや菌類が原因となる植物病によって中米での生産量が減っていることから、今年度の全世界におけるコーヒーの生産量は前年度の1億4,670万袋から1億4,100万袋程度まで減少すると予想しています。また、同氏は今後のコーヒー豆の生産について「世界は生産をブラジルだけに頼り続けられない」と述べています。
さらに2015年は天候不順等の影響でブラジルの収穫高が不透明になっており、ブラジル国家食料供給公社(Conab)によると前年並みである4,410万~4,660万袋の生産量が予想されていますが、全国コーヒー評議会ではもっと生産量は少なくなり4,000万袋程度になるだろうと予想されています。
シルバ氏は「ブラジルはさらなる干ばつに悩まされており、今回はロブスタ種の生育地域が影響を受けている」と話しています。ロブスタ種はアラビカ種よりも安価で苦味が強いのが特徴の品種で、ブラジルではどちらの品種も栽培されています。
このロブスタ種を多く栽培しているエスピリトサント州では、向こうしばらくは雨の少ない状態が続くだろうとブラジルの気象予報会社であるソルマは見ています。また、同社の気象学者ではアラビカ種が栽培されているサンパウロ州とミナスジェライス州ではより多い降雨量が期待できると述べています。
コモディティー専門であるアメリカのコンサルティング会社J・ゲインズ・コンサルティングで代表を務めるジュディス・ゲインズ・チェース氏が、2016年度にベトナムやインド、インドネシアなどにおけるコーヒー生産高は世界のコーヒー相場を安定されるまで十分ではないと述べました。さらにこの需要と供給の逼迫から、世界のコーヒー在庫は2015年10月以降4,000万袋程度減る可能性があるとも指摘。
このような需給逼迫による価格上昇だけでなく、一方で為替相場の変動でも市場は苦しんでいます。
ブラジルのレアルは米ドルに対して約10年来の安値水準となっています。ブラジルのコーヒー生産者や輸出業者は、より多くのレアルを得るためにレアル安となっているタイミングでコーヒーを売る傾向が顕著になっています。