1杯のコーヒーが私達に届くまでの問題点とは?

コンビニコーヒーという、たった100円で淹れたてのコーヒーが楽しめるようになり、より身近にコーヒーを感じる人々が増えているのではないでしょうか。最近では自宅で本格的なドリップコーヒーを楽しむコーヒーフリークが増えているといいます。

コンビニ各社ではコンビニコーヒーの熾烈な販売競争が行われ、今ではコンビニエンスストア全体の売り上げに大きく貢献していると言っても過言ではありません。

少し前を振り返ってみると、日本マクドナルドが2008年に高等級アラビカ豆を使用した本格コーヒー「プレミアムローストコーヒー」100円(Sサイズ)で販売開始し、爆発的なヒットを記録しました。

日本マクドナルドのこの成功を受け、大手コンビニ各社は2013年に一斉に淹れたてコーヒーを100円~180円の安価な値段で展開し、現在に至ります。

また、コンビニだけでなく今年新たに日本に上陸した「ブルーボトルコーヒー」やニューヨークのブルックリンから進出してきた「ゴリラコーヒー」など、サードウェーブと言われる新しいムーブメントがコーヒー業界に起きています。

ちなみに、サードウェーブコーヒーというのは豆の個性に注目して単一の豆をブレンドしないで使用して淹れ、原産地の違いによる風味を味わうことを目的としているスタイルです。

このようなコーヒーブームの中で、実は私たちが知らないコーヒーに隠された事実をご紹介しましょう。

1.新興国が世界のコーヒー豆生産を支えていますが、コーヒー豆の買い取り価格を決定する場所はロンドンとニューヨークの国際市場

2.生産者が手にする収入は世界平均で見ると、コーヒーの末端価格の約10%程度であると言われています

3.コーヒーの販売には仲買人や生豆を取り扱う企業、船舶会社、焙煎業者など多くの中間業者が介入し、生産者の取り分が少なくなる現状があります

現在、世界のコーヒー豆農家は約1億2,500万人とも言われており、主な原産地は南米やアフリカなどの熱帯もしくは亜熱帯の国々。

「キリマンジャロ」が代表的であるタンザニアや山岳地帯で栽培されるため、しっかりした苦みが特徴であるエチオピア、出荷港である「モカ」が世界的に知れ渡っているイエメンや「ブルーマウンテン」という名を世界に知らしめたジャマイカ、コロンビアでは大粒で豊かな酸味を持つのが特徴ですし、そのほかキューバやグアテラマといった国が中心です。

また、インドネシアやインドでも世界を代表するコーヒー豆が栽培されています。

このように経済発展や開発の水準が先進国に比較して低く、いわゆる新興国と呼ばれる国々で世界のコーヒー豆生産量を支えているのが現状です。

ところが、ここに一つの問題があります。

東京農業大学教授で環境学者の石 弘之氏によると、コーヒー農家の取り分について世界平均で見てみると、末端で販売されるコーヒーの約1割程度しか収入がないとのことです。

末端価格と生産者の取り分にここまで大きな差があるのはなぜでしょうか。

その理由はコーヒー豆が豆農家から消費者の手に渡るまでに多くの中間業者が介入することにあります。仲買人や流通企業、船舶会社に焙煎会社などが関係しているため、コーヒーの価格の高騰につながります。

さらに、コーヒー豆の買い取り価格は生産地から遠く離れたニューヨークとロンドンの国際市場で決まります。大手企業がコーヒー市場を支配し、いまでは石油に次ぐ取引規模を持つ国際的な商品になっています。

その中で先に述べたような日本の各社コンビニでは、大きな利ざやを得る輸入業者や焙煎業者を排除し、新たに設立したグループ会社が直接現地から豆を買い付けたり、自社農園を開発するなどの企業努力によるコスト削減で、一杯100円という低価格での提供を実現しているのです。

多くの中間業者の利潤を考えなければ、現地の生産者が実際に一日汗をかきながら1ドル以下の低賃金で働いたおかげで、コーヒーの薫り高い味わいが作られています。しかしうがった見方をすると、そうはと言えない現実もあります。

生産現場では貧困に悩み、子どもまで厳しい労働を強いられている環境もあります。このような児童労働の問題や環境問題も含め、生産者と消費者の間の価格差を従来よりも縮めようとするフェアトレードの必要性が訴えられてきました。

しかし、世界のコーヒー需要は天井知らずで上昇基調にあります。

コーヒー豆は投資マネーのターゲットにもなっており、国際価格は高騰を続けていますし、そこに中国をはじめとした今までコーヒーを飲む習慣があまりなかった国や地域でもコーヒー文化が定着してきているために、生産が需要に追い付かない事態も懸念されています。

このようなマーケットの動向を知るための情報や独自の販売ルートを持たない小規模農園では、中間業者に頼らざるを得ません。そして結局、正当な利益を手にすることなく生産を続けていくことになります。生産者の持続可能な生産と生活を支えるために必要なフェアトレードという機能が働いていない現状が浮き彫りとなっています。

ここで訴えておきたいのは、コンビニ各社やコーヒー会社が悪いということではないこと。世界経済の中で、消費者と生産者の間に大きな格差があるのは何もコーヒーだけの話ではありません。

この問題は簡単に解決できるものではなく、また簡単に誰が悪いと言えるものでもありませんが、このような現状であるということは知っておく必要があるでしょう。

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