忘れちゃいけない日本の文化、120円のぬくもり「缶コーヒー」
最近のコーヒー事情
最近、都心ではサードウェーブコーヒーの波が勢いを増しています。
ブルーボトルコーヒー、クチューム、ゴリラコーヒーなどの欧米の名だたるコーヒーチェーンが日本に進出していることは、コーヒーファンならずとも話題にしていることでしょう。
サードウェーブコーヒーは、豆の産地や品種、それに合った焙煎方法などにこだわり、よりプレミアムな1杯を提供する流れとなっているのが特徴です。
その一方で、手軽に淹れ立てコーヒーを味わえるコンビニコーヒーも日本中でブームとなっています。
コーヒー産業は人々の様々なニーズに応え、著しい多様化が見られます。
今、コーヒー文化の転換地点に私たちは立っているのかもしれません。
しかし、コーヒーと言えば、忘れてはならないものがあります。
特に冬には欠かせない、あたたかなあの「ぬくもり」です。
実は日本だけ!?缶コーヒー文化
コンビニコーヒーもいいですが、もっと手軽に飲めて持ち運びや保存に便利な「缶コーヒー」を忘れてはいけません。
ところで、海外旅行中、缶コーヒーを飲むアメリカ人やイタリア人を見たことがありますか?
そういえば、映像や写真でさえもあまりないと思います。
それもそのはず、缶コーヒーはもともと日本で開発されたものであり、自動販売機があまりない海外ではそれほど普及しなかったのです。
もちろん、コーヒーそのものは海外から伝わったものですが、1969年に世界初のミルク入り缶コーヒーがUCC上島珈琲株式会社から発売されました。
翌年の大阪万博で紹介され、大きな話題となったそうです。
今や生産量は世界一。1ケース30本のものが1年で3億ケースも売れているそうです。
サードウェーブコーヒーやコンビニコーヒーの陰に隠れて存在感をがなくなりぎみだと思っていた缶コーヒーですが、まだまだ人々は缶コーヒーを必要としているのですね。
缶コーヒーの進化
大阪万博から50年近く経とうとしていますが、未だに進化を続けている缶コーヒー。
なんと、海外からの観光客がお土産に缶コーヒーを買って帰るほどだとか。
日本国内ではCMの面白さや工夫を凝らしたプロモーションが売り上げアップにつながります。
しかし、それを普段から享受しない海外からのお客さんを魅了するのには、ちゃんと「おいしいから」という理由があるようです。
淹れ立ての味を缶コーヒーで再現するのはどうしても困難ですが、コーヒーメーカー各社はなんとかして淹れ立てのものと遜色なくおいしいものをつくろうと、開発に開発を重ねてきました。
たとえば、通常のドリップ抽出では香りがすぐなくなってしまうため、豆の挽きかたを工夫したり、エスプレッソのように蒸気を利用して成分を抽出するなど、様々な試行錯誤がありました。
その結果、年代を経るごとに缶コーヒーは確実に美味しくなり、サントリーの「プレミアムボス」やキリンの「別格 希少珈琲」など高級志向の商品まで誕生するまでになったのです。
缶コーヒーの魅力
缶コーヒーの魅力は、やはり自動販売機で手軽に買えるところでしょうか。
出張に向かう新幹線での1杯、出勤前の1杯と、思い立ったらすぐ買えてすぐ飲めるところが魅力です。
また、冬の空気が冷たい帰り道、自販機のホットコーヒー缶のボタンを押し、両手で缶を挟んで暖まりながら帰った思い出などはありませんか?
学生でも気軽に買える120円という低価格、コンビニコーヒーには若干負けていますが、手袋から伝わってくるぬくもりは、缶でしか味わえません。
冬になると自販機の「あたたかい」コーナーが増えることで季節感を感じます。
昔は100円玉1つで買うことができたのですが、あと20円必要になったのは、少々残念なところです。
しかし、毎年冬には私たちの心に、ちゃんと「ぬくもり」を届けてくれるのです。
そのような意味でも大切にしたい、缶コーヒーは日本の独自のコーヒー文化ですね。