「ブルーボトルコーヒー」の行列に見る行列文化

東京の清澄白河に、「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」が2015年2月6日に出店しました。

「Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)」はアメリカ西海岸を中心に展開しているコーヒーチェーンで、日本ではこの清澄白河が初出店になります。

初日には最大で2時間半にもなる行列ができるほどコーヒーの愛好家が集まり、先頭に並んだ人は夜中の3時から並んでいたそうです。

これほどの行列ができた理由は、メディアやSNSによる情報の拡散が挙げられるでしょう。

ブルーボトルコーヒーについて、「サードウェーブ」と呼ばれるコーヒーの新たな流行を押し出した店であることや、海外への進出は日本が初めてというような希少価値を煽る情報なども広がりました。

エスプレッソを中心に好みによって様々なアレンジを楽しむ大衆的なコーヒー文化という、スタバが中心となった現在のトレンドはすでに飽和状態となっており、そこから脱却できるような店を期待している人も多かったのではないでしょうか。

どんなトレンドも消費者が飽きてしまうサイクルはどんどん早くなっていますし、そこまで思っていなくても「スタバよりおいしい店」を求めている人にとっては、ぜひブルーボトルコーヒーに行ってみたいと思うでしょう。

しかし、もしブルーボトルコーヒーの魅力として、「サードウェーブ」に定義されている「こだわりの豆を一杯一杯手淹れで、浅煎りするのが主流の地域密着の店」というコンセプトに惹かれたのであれば、それは日本に古くから存在する「喫茶店」の形態と言えます。

その証拠にブルーボトルコーヒー創業者のジェームス・フリーマン氏は、自身が創業する際に日本の喫茶店から影響を受けたと話しており、日本が海外進出の初店舗となった理由の一つでもあると言われているのです。

そのように日本にはブルーボトルコーヒーの創業者も影響を受けたほどの良質な喫茶店が多数存在しますが、それでもあえて並んでまでブルーボトルコーヒーに行ってみたいと思うのは、ブルーボトルコーヒーには話題性があるからでしょう。

ブルーボトルコーヒーはすでにアメリカで多くの評価を得ていますし、その店が世界進出の第1号店に日本を選び開店するという話題は、メディアやSNSを通じて広まり、コーヒー好きな消費者はその情報に奮い立ち2月の寒空の下にもかかわらず、長い行列を作りました。

「新しい」ということはそれだけで価値が十分あるように感じられますし、ほかの人よりも先に自分が体験したいと思う人も多いのではないでしょうか。

ですが、コーヒー好きが列を作って並んでいる一方で、その行列を冷ややかな目で見る人も少なくありません。

いろいろ話題があるとは言え、たかがコーヒー1杯のために2時間も並んで待つことを異常だと思ってもおかしくはありません。また、行列がテレビ中継されたり、ネット上にアップされた写真や動画を見た人が、その状況に違和感を感じたとしてもそれは無理もないことでしょう。

しかし、そんな中で次のようなツイートがありました。

「島根だったか長野だったかにスタバができた時にすっごい行列ができた時に、都会の人たち爆笑してたよね。今同じことが時を超えてブルーボトルコーヒーで起きてるけどどうよ。」

確かに2013年4月、島根県に初めてスターバックスが出店した際に大きな話題となりました。このときもやはり行列ができ、開店初日の売り上げは全国の店舗の最高額を記録するほどだったとか。

しかしこれほどの歓迎ムードの中でも、今回のブルーボトルコーヒーと同様に行列を冷ややかな目で見て、笑いを送った人もいたことでしょう。

俯瞰した立場で考えると、島根県のスターバックス、そして東京のブルーボトルコーヒー、それぞれで発生した行列は同じ「行列」でしかなく、そこに優劣は存在しないのかもしれません。

日本の行列文化は「希少性」と「話題性」から生まれるものが多いですが、そこに「地域差」や「嗜好の違い」はあっても並んでいる人たちはみんな同様の期待を持っています。

今回のようにコーヒーを求めて並ぶ人もいれば、アニメキャラクターで並ぶ人もいます。並ぶ対象となる嗜好こそ違いますが、「行列に並んでもいいから欲しい」という思いや、「その製品やサービスを歓迎したい」という各個人の前向きな感情に違いはありません。

ネタにされ、ときには冷たい視線を受けることもある日本の行列文化ですが、「たとえ誰かに笑われても」という想いで、今日も開店を心待ちにしている人たちがいます。

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