バリスタ世界チャンピオンを生み出した「日本人らしさ」と「日本らしからぬ」企業姿勢

昨年、NHK-BS1で放送されている『COOL JAPAN 発掘 かっこいいニッポン!』に、2014年のワールドバリスタチャンピオン・井崎英典さんが出演したことがあります。

井崎さんは長野県のカフェでご活躍されていたバリスタさんで、優勝以来海外からも井崎さんが淹れるコーヒーを飲みに訪れる人がいるのだとか。

コーヒーの味一つで海外からのお客さんを惹きつけるなんて、ほんとうにすごいことです。

番組では、井崎さんが若いバリスタを指導している様子も紹介されました。

イタリアで生まれたエスプレッソマシンを使いながらも、繊細で慎重、お客さんにおいしいものを届けたいという、まさに日本人のよさを体現した井崎さんの仕事は、世界チャンピオンにふさわしいものだったと思います。

井崎さんが出場したワールドバリスタチャンピオンシップは、誰でも出場できるという大会ではありません。

まず自国のバリスタ大会で優勝していることが最低条件。

そこからさらに、厳選された選手のみが出場できるという、参加するだけでもハードルが高い大会で、そこで優勝するというのは、正真正銘世界で認められたバリスタであることを意味します。

このワールドバリスタチャンピオンシップは、単においしいコーヒーを淹れればいいというものではなく、コーヒー自体がおいしいことは当然として、実際審査員をお客さんとしていかにもてなすか、コーヒーに関する知識がどれだけあるかも試され、オリジナルドリンクも考えなければなりません。

井崎さんは出場に際して、コスタリカのコーヒー豆生産者とタッグを組みました。自分の仕事に徹底してこだわりをもって取り組むというのも、日本人らしい職人気質で、そこもまた審査員の評価が高かったポイントだったようです。

井崎さんがチャンピオンになれたのは、ご自身の努力も然ることながら、井崎さんがが勤める丸山珈琲の社長さんによる薫陶も大きかったことと思います。

バブル崩壊以来、日本の企業は育成費がかからない即戦力ばかり求めてきました。そんな企業が100%だったとは言いませんが、多くの企業が未経験者を敬遠し、育てるということをしてきませんでした。

ところが丸山珈琲の場合、日本からバリスタチャンピオンを排出することを目指し、世界に通用するバリスタの育成に力を入れてきました。そのおかげで、井崎さんのような世界チャンピオンが誕生し、海外からもお客さんが訪れるようになったのです。

こういう「人を育てていく」というい企業姿勢をもった会社が、今の日本にどれだけあるでしょうか?

ところで、井崎英典さんは2016年の1月に独立をするために丸山珈琲を退職しました。

社長さんもこれを快諾し、円満退社だったようです。丸山珈琲であれば、井崎さんが去った後も、第2第3の井崎さんが現れることでしょう。

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