シンガポールで人気の「tcc」が日本上陸!その魅力を紹介
2015年2月16日、東京銀座にシンガポールで28店舗を展開している人気カフェ「tcc」が日本初出店しました。5年がかりで飲食品商社ユニコ・ジャパンインターナショナル(千代田区)が準備を行い、ようやくtccを運営しているシンガポールのSarika Connoisseur Cafe Pte Ltd.との提携を実現させました。
tccはシンガポールのガイドブックには必ず載るような定番スポットで、観光客や地元民に親しまれているローカルチェーン店。その人気は使用するコーヒー豆の産地を限定していたり、生クリームをたっぷり使用したラテメニューが楽しめるだけでなく、ステーキやシーフード料理など本格的な食事が楽しめる点にあります。
このようにtccの魅力は「カフェなのになんでもあり」と言えますが、今回出店した銀座店では3階はカフェメニューを展開する「tcc カフェ&レストラン」、4階はステーキやシーフードメニューなど食事も提供する「tcc ステーキ&シーフード」と2フロアに分かれています。
この戦略についてユニコ・ジャパンインターナショナル事業開発室の関泰信ゼネラルマネージャーは、「銀座は世界一の美食都市と言われており、カフェスタイルの店舗で本格的なステーキなど食事を楽しんでもらうことは難しい。本格的な料理を食べるにはそれにふさわしい雰囲気が必要だと考えて、フロアを2つに分けて店内のインテリアもまったく異なるものにした」と話します。
銀座には世界各国のレストランが集まっており、シンガポールの人気料理店もシンガポール政府公認のシーフードレストラン「シンガポール・シーフード・リパブリック」や8種類の小龍包で人気の「パラダイスダイナシティ」が存在します。同店はこのような人気店に対して何で勝負をするのでしょうか。
サイホン、水出しコーヒーから生クリームたっぷりのフラッペまで
tcc カフェ&レストランに入るとまず、背丈より高いガラス製の巨大なフラスコのような装置が目に入ります。この装置は「ウォータードリップ」と言い、水出しコーヒーに使用します。水滴が1滴1滴落ちるのを目で数えられるほどのゆっくりさでコーヒーを抽出し、8時間かけてフラスコ1杯分を抽出します。
さらにサイホン式のコーヒーメーカーがずらりとカウンターに並び、その奥にも数多くのコーヒーマシンが見えます。同店で提供するストレートコーヒーはサイホン式ですが、これはオプティカル(光学)ビームサイホンテーブルと呼ばれる、アルコールランプではなくハロゲンランプを使用して加熱し、抽出しています。
最近流行しているサードウェーブコーヒーでの主流はハンドドリップですが、サイホン式のほうが抽出時間が長く豆自体の香りがよくわかり、サイホン式のコーヒーを飲むと虜になってしまう人も多いと聞きます。
このようにサイホンで淹れたコーヒーをいれるカップは、カウンターの奥に設置されている棚から好みのものを選べます。必ず1杯ずつ注文を受けてから豆を挽いて淹れているとのことです。そのコーヒー豆を焙煎する機械には、ドイツ製の焙煎機をさらにカスタマイズしたコンピュータ制御の焙煎マシンを使用。細かい注文の通りの焙煎が可能。
サイホン式が多いですが要望があればハンドドリップタイプのコーヒーも提供可能と言います。同店ではハンドドリップの味そっくりに抽出が可能なマシンを使用しているため、スタッフの習熟度に関係なく高レベルなコーヒーが提供できます。
また、エスプレッソやアレンジコーヒーなどの種類も多く、オープン時のメニューではサイホン式コーヒーだけで産地ごとに8種類、ハンドドリップタイプのコーヒー、3種類のエスプレッソにホット・ラテは6種類、アイス・ラテが5種類、さらにオリジナルフラッペも6種類とかなりのメニュー数となっています。
近年は個性重視で独自スタイルに特化しているコーヒーショップが増えているため、このような幅広いコーヒーメニューを用意している店は多くないでしょう。しかもドリンクメニューはこれだけでなく、今後さらに増やしていく予定とのことです。同店で店長を務める成田良爾氏は、「どんなコーヒーでもここに来れば飲めるという店にしたい」と語りました。
実はシンガポールにはコーヒーの味にうるさい人が多く、その土地柄も影響した豊富なコーヒーメニューは現地tccの大きな特徴だと言います。
カウンターの隣には小型冷蔵庫程度の大きさがあるガラスケースの機械もあります。これはNOVO MARK IIというドイツ製でコンピュータ制御の焙煎マシンです。コーヒーにとって焙煎は「コーヒーの味は焙煎で決まる」と言われるほど大事ですが、このマシンを使うと温度や時間、風量を細かく制御して焙煎することができるため、リクエストがあればお客様の好みに合わせて5~6分程度で焙煎できると言います。
ちなみにそのリクエストをしても、料金は生豆の代金だけで焙煎費用は無料です。ただし焙煎したてのコーヒー豆の香りはまだ弱く、持ち帰ってから数日間置く必要があります。そのため事前に注文しておけば、何日か前にお店で焙煎して飲み頃になった豆を渡してくれます。
フードメニューの目玉は「焼きっぱなしステーキ」
カフェとレストランに分かれていますが、カフェでもかなりフードメニューが充実しています。米国産ビーフを150グラム使用しているハンバーガーやステーキサンドイッチだけでなく、パスタやカレー、スープ付きの海南チキンライスなどたっぷりとボリュームのある軽食がラインナップされています。
デザートで話題を呼びそうなメニューは「マスカルポーネ パンケーキ」でしょう。人気カフェ「bills」ではリコッタチーズを使ったパンケーキが看板メニューですが、同店ではカルポーネチーズを使用し、ティラミス風のパンケーキに仕上げています。
そして4階のレストランフロアで一押しメニューは、やはり本格ステーキとシーフード料理でしょう。
特にステーキで使用している牛肉は米国農務省(USAD)のハイランクに格付けされているものを使用し、高級ステーキハウスでよく使用されている上火式ブロイラーで焼き上げて提供。
日本でのステーキは鉄板で焼いて下から熱を加え、短時間でむらなく焼き上げるグリル式が一般的ですが、上火式ブロイラーは上からじっくりと焼き上げる方法でグリル式よりも肉質が柔らかく、仕上がりがふっくらするのが特徴だそう。
同店では「あまりいじることをしないで素材を生かしてシンプルに、そしてストレートに仕上げた肉のほうがうまみが伝わりやすい。ある意味”焼きっぱなし”で仕上げている」と紹介しました。
しかし意外だったのはシンガポールらしさがあまり見られないこと。実はシンガポールにおいてtccはハイエンドカジュアルレストランという位置づけであり、欧米系のメニューが中心なのだそう。そして現地の味付けそのままではなく、日本人向けに少しアレンジし、くっきりとアクセントを引き立てているそうです。
シンガポールの特定メニューではなく、多様なメニューこそがある意味”シンガポールらしい”と言えるのかもしれません。