ナポリでは知らない人にコーヒーをおごるシステムがある!?
コーヒーはイタリア人のソウルドリンク。生活の一部となっているコーヒーを貧しい人など他の人達と分かち合おうという精神があります。この精神からナポリでは他の人のためにコーヒーの代金を支払うという文化があります。
このシステムは「caff sospeso」と呼ばれ、お金に余裕のある人は自分が飲むコーヒーの他にもう一杯の代金を払います。そして1杯は自分で飲み、もう1杯分についてはレシートをお店に預けます。このレシートを使ってお金に困っている人が、カフェでコーヒーを楽しむことができるというシステムです。
あるカフェでこのシステムを使ってレシートをおいてきたLaura Cozzolinoさん(37歳女性)は、自分はナポリ人だからたくさんコーヒーを飲むと話します。また彼女は「コーヒーは生活の中でとても大切なものだし、この日々の小さな楽しみは誰でも味わえるべきだ」と話します。
この「caff sospeso」は2010年にイタリア全土を通したネットワークが誕生しました。政府が実施している緊縮財政が文化面にも影響を及ぼす中、生活に困窮している人でもコーヒーを楽しめるようにというイタリア人の団結力から生まれたものです。
このシステムでは全国の加盟店はお店のウィンドウにステッカーを貼ります。このステッカーは黒と茶色地に白いエスプレッソカップのマークをあしらったデザイン。そしてこのステッカーの貼ってあるお店で、お客はカウンターに置かれているコーヒーポットなどの入れ物にレシートを入れていきます。
お金がなくてもコーヒーが飲みたいという人は、このレシート入れであるポットからレシートを取り出し、カウンターでサーバーに渡す仕組みとなっています。
「Gran Caff Gambrinus」は創業154年という老舗のカフェで、毎日1,500杯以上のエスプレッソを販売していますが、そのうち10杯程度が「おごり」のレシートだそうです。そして1日5人程度の人がこのおごりのコーヒーを飲み、恩恵に預かっているといいます。
このシステムに表れる助け合いの動きはコーヒーだけでなく、南部の一部のお店ではサンドイッチの「おごり」も推進しているそうです。また、コーヒーショップだけでなくほかの業種にも広がっており、ピザ屋でのピザのおごりや本屋で自分が欲しい本の他にもう1冊購入して置いていくという活動も始まっています。
このような自分が好きな飲み物をほかの人も楽しんでもらおうと活動する心豊かな文化によって、美味しいコーヒーが生み出されているのかもしれません。