ネスレ日本のネスカフェゴールドブレンド バリスタ戦略とは

コンビニやファストフードのコーヒーからカフェチェーンのコーヒーまで、そのおいしさにレベルの差はあるとはいえ、街に出れば値段に合わせて値段なりのおいしいコーヒーを飲むことができます。その陰で、「お手軽だけど味はそこそこ」の代名詞であるインスタントコーヒーの人気はどんどん落ちているようです。

そんな厳しい状況の中、インスタントコーヒーの大手メーカー・ネスレ日本はコーヒーの業界団体から脱退し、独自の路線を進み始めました。一体何が起きたのでしょうか?

ネスレ日本は、新しい技術により「レギュラーソリュブルコーヒー」という新製品を発売しました。それまでのインスタントコーヒーは、単にコーヒーの抽出液を乾燥させ、粉末にしただけのものでした。それに対し「レギュラーソリュブルコーヒー」は焙煎したコーヒー豆自体を粉砕して、コーヒーの抽出液に混ぜた上で乾燥したというもので、いわば香り高い豆がインスタントコーヒーに包まれているというこれまでになかったタイプのコーヒー。

ネスレ日本は「レギュラーソリュブルコーヒー」はコーヒーの表示に関する公正競争規約にある「インスタントコーヒー」にはあたらない新しい種類の商品であるとして、名称を「レギュラーソリュブルコーヒー」と記載しました。

ところが、これに対しコーヒーの業界団体・全日本コーヒー公正取引評議会が異を唱え、「レギュラーソリュブルコーヒー」の名称及びその使用を認めないことを決めました。

それを受け、ネスレ日本は「レギュラーソリュブルコーヒー」という名称での販売、広告ができなくなることを理由に全日本コーヒー公正取引評議会を脱退。全日本コーヒー協会、日本インスタントコーヒー協会、日本珈琲輸入協会なども退会しました。

これを機に、ネスレ日本は「レギュラーソリュブルコーヒー」を中心に据えた独自の路線をとるようになったのです。

今後は、家庭向きには「レギュラーソリュブルコーヒー」を使って5種類の本格コーヒーを作れるコーヒーマシン「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」の普及、企業向きには「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」を無償で貸し出す「ネスカフェアンバサダー」展開を進めていく模様です。

「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」は2014年5月の時点で累計販売台数200万台を上回るという好調ぶり。さらに10月には多摩美術大学とのコラボ商品で、サイズを小さく操作性は向上した新商品「「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ TAMA」を発売します。

「ネスカフェ アンバサダー」については、2014年の8月の時点で応募者が14万人を突破。この勢いに乗ってさらなる普及をすべく、オフィス家具メーカー・イトーキとの共同で「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」を設置できるテーブルを開発。

同時に「ウェルネスオフィス・プロジェクト」を開始しました。これは「オフィス環境、働き方のルールをちょっと変えよう」をテーマに、「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ」を中心とした新しいオフィスのコミュニケーションスタイルを提案するというものです。

このように破竹の勢いで前進を続けるネスレ日本、コーヒー関連企業・団体は、強大なライバルを自ら作り出してしまったと言えるのではないでしょうか。

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