『コーヒーを飲んでも目が冴えない』のは遺伝子のせいらしい
お酒に強い人、弱い人、まったく飲めない人の違いは何かというと、これは肝臓のアルコール分解機能の差にあります。
人体に吸収されたアルコールは肝臓でまずアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され、そしてアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に変わります。
お酒が強い人はこの能力が高い人、弱い人はこの能力が弱い人、そしてまったく飲めない下戸は、アセトアルデヒド脱水素酵素自体が不活性で、アセトアルデヒドを分解すること自体ができません。
カフェインについても似たようなことがあります。カフェインは脳の血液脳関門を通って脳細胞に達することができる物質で、脳に入ったカフェインは、アデノシンレセプターという受容体と結びつきます。
アデノシンレセプターは、本来アデノシンという物質と結びつくと眠気を誘発しますが、カフェインはその結びつきを阻害するために眠気を起こしにくくします。
コーヒーなどのカフェインを含む飲料が眠気覚ましとして用いられるのはこのため。
しかし、寝る直前にコーヒーを飲んでもまったく問題なく眠れるという人がいます。筆者自身もその一人。コーヒーだろうがお茶だろうが、飲んで頭が冴えたことなどありません。
どうしてこういうタイプの人がいるのか。これも肝臓の分解能力が関わっています。
肝臓には、カフェインを分解する酵素があって、分解されたカフェインは尿酸となり、尿から捨てられます。この酵素の働きが強いと、脳に達するカフェインの量が減り、アデノシンレセプターの働きが阻害されないので、眠気覚ましにならないわけです。
最近アメリカのノースウェスタン大学の研究チームが、カフェインの分解能力が高い人には、分解酵素の働きを促す「CYP2A6」という遺伝子に変異があることを見つけました。
「遺伝子の変異」というと「放射能汚染ガー」などと騒ぎ出す人もいるかもしれません。
確かに放射線は遺伝子の変異をもたらす場合もありますが、しかし遺伝子の変異は環境その他の要因によっても起こるため、遺伝子の変異があったからといって騒ぎ立てるようなものではありません。
それに、このような遺伝子の変異は簡単に起こるようなものでもありません。
中国人や日本人は、最低でも千年以上前からお茶によってカフェインに触れてきました。それゆえ、カフェイン分解能力が高い遺伝子を持つ人が多いと考えられます。
しかし、日本人でも分解能力が弱い人ももちろんいるわけで、コーヒーを飲むととたんに目が冴えるという人は、あまり大量に摂取しないほうがいいでしょう。