間違った自律神経の理解でカフェインを批判するのはおかしい
ネットにあふれる健康情報には、医学的根拠があるものとないものがあります。
一見医学的根拠があるように見せながら、その実まったくないものを「疑似医学」と呼ぶこともあります。その疑似医学に最も多いのが、自律神経に関するものです。
疑似医学は宗教にも似ていて、根拠がない決めつけが横行しています。特に多いのが、健康になるためには副交感神経優位にすべきであるというものです。
彼らの主張を見ると、まるで交感神経が体に悪いもので、副交感神経だけが健康に寄与すると言わんばかりです。
ゆえに、交感神経を活性化する働きがあると考えられているカフェインは、悪魔の使徒のごとく槍玉に挙げられます。
しかし、実際には自律神経は交感神経と副交感神経が必要に応じて切り替わっており、そのどちらも人体には必要。
例えば副交感神経教の信者は、副交感神経が優位になると血管が拡張し、血行が改善するといいます。
しかしそれはまったくの逆。これは、ホースをイメージしてもらえばわかることですが、ホースの口を狭めたほうが水の勢いは増します。
血管もこれと同じことで、収縮したほうが血流が勢い良くなり、つまり流れがよくなります。
どうしてこういう取り違いが起きているかといえば、肩こりなどが筋肉の緊張で血管が圧迫されて血流が悪くなる、というようなことと混同しているのでしょう。
交感神経による血管“収縮”と、周囲の筋肉の緊張などによる血管“圧迫”はまるで別の話です。
副交感神経による血管拡張は、血流を悪くするのです。
また、交感神経は膀胱平滑筋を弛緩させ、膀胱括約筋を緊張させることで尿を貯めます。簡単にいえば、袋の部分を柔らかく、その出口をきつくすることで中身を貯めやすくしています。
副交感神経はその逆で、膀胱平滑筋を緊張させ、膀胱括約筋を弛緩させることで排尿を促します。
副交感神経が優位の状態では頻尿になりやすいのです。
自律神経はお互いが必要に応じてそれぞれ働くからこそ体のバランスがとれています。副交感神経だけが常に優位になるようなことがあったら、それは病気です。
カフェインの利尿作用は、交感神経を刺激することで血管が収縮し、血流がよくなるために、腎臓の活動も高まり、尿が通常より早く作られるために起こります。
しかし、溜まった尿を排出するためには副交感神経が働かねばなりません。
要するに、カフェインで交感神経の活動が強まっても、副交感神経は必要に応じて働くのです。
そこのところを理解せずに、カフェインを非難するのは、医学ではなく宗教であるといわねばならないでしょう。
副交感神経優位が正しいという間違った認識の上に立ったカフェイン批判、コーヒー批判はナンセンスです。
こういうことを書くと、今度はカフェインは大量に摂ると中毒になるからいけないなどと問題をすり替えてくるわけですが、なんでも大量摂取がいけないのは当然のこと。
ただまあ、そうやって極端な例を出して根本を誤魔化そうとするのは、負けを認めたというのと同じことだとは思いますが・・・。
コーヒー好きな人は医学っぽい宗教に騙されないようにしましょう。