コーヒーに発がん性がないことはWHOも認めている
世の中で「自然食」ほど胡散臭いものはありません。そもそも、多くの自然食や健康食を名乗る類で推奨する野菜にしろ玄米にしろ不自然なものです。
だいたい、日本人は農業を自然と結びつけようとしますが、そういう「不自然」な考え方をしているのは日本人ぐらいのものでしょう。
「農」の字源は林を耕すこと。甲骨文字では曲の部分は林でした。それが後に金文では「田」になっています。
いずれにしろそこには人工的に土を耕すという意思が込められているわけです。
英語にしてもアグリカルチャー。語源は「畑を耕作する」で、漢字の「農」とほぼ同じ考え方で作られている言葉です。
農業というのは自然ではありません。その対極にある「人工」です。人間が食べやすいように品種改良したものを、人間が育てて収穫しやすいように集中管理して栽培する。これを「人工」と言わずして何なのでしょうか?
それはさておき、自然食のたぐいを推奨する人が、攻撃対象について持ち出すのを好むのが「発がん性」という言葉。「○○には発がん性があるから摂るべきではない」というのをよく目にするはずです。
しかし、それらにはたいてい根拠がないか、あっても針小棒大の拡大解釈があります。
コーヒーもまた「発がん性」を理由にやり玉に上げられていたものの一つ。
もっとも、コーヒーの発がん性については、WHOに属する国際がん研究機関=IARCも認めてきました。とはいっても、自然食信者の言うような、コーヒーを飲んだら必ずがんになるかのごとき大げさな話でもなかったのですが・・・。
ところが、2016年6月にそのIARCがこれまでの認識をあらため、公式に発がん性を示す根拠はないと発表しました。世界の「健康」に関する総本山の研究組織がこう言っているわけですから、これを否定するのはなかなか難しいことでしょう。
コーヒーについては発がん性どころか、がんの発症を抑える効果すら示唆されています。
我が国の国立がんセンターが行った研究によれば、コーヒーには子宮がんを抑制する可能性があり、また肝臓がんはほぼ確実に抑制するとのことです。
また、がんに対する抑制効果以外にも、他の研究では糖尿病の抑制などにも効果がある可能性が示されています。
こういうニュースは、これまでコーヒーをまるで毒であるかのように非難してきた自然食信者にとっては不都合らしく、いくらコーヒーにそのようなプラス面の効果があるにしても、害のほうが多いのだから飲むべきではないなどという主張も見たことがあります。
しかし、そう主張するならそれだけのエビデンスを示さねばなりませんが、彼らはそれをしません。というよりはできないのです。
あるいは、発がん性以外にカフェイン中毒などの危険性を言い出すかもしれません。
しかし、それを指摘するときにすべきことは、どれだけ摂取すれば危険かを示すことであって、危険だから飲むなと言い募ることではありません。
そもそも、ネットに転がっている「カフェイン中毒」の危険性を訴える記事は殆どがカフェイン中毒とカフェイン依存症を混同しており、風評の域を出ないものばかりで信じられません。