コーヒーを飲むと乳がんが抑えられる?
コーヒーをあまり飲まない人と比べて、1日2杯以上飲む人は乳がんの進行や再発が抑えられることがわかりました。また、「カフェイン」と「コーヒー酸」というコーヒーに含まれる成分には、乳がんの細胞増殖を抑制する効果があることも判明しています。
「コーヒー」によるホルモンの働きへの影響に着目
この調査はがんの臨床研究の専門誌クリニカル・キャンサー・リサーチ誌にスウェーデンの研究グループが2015年2月17日に報告しました。
これまでの調査においてコーヒーとホルモンの働きについて何らかの影響がある可能性があると示されていました。
「乳がん」はホルモンに深く関係するがんです。
乳がん細胞の多くは、「エストロゲン」という女性細胞の受容体を持っていて、エストロゲンの影響を受けて乳がん細胞が分裂し増殖します。
今回、研究グループはコーヒーのエストロゲン受容体に対する影響がどのように関連しているのか、どのような仕組みとなっているのかについて調査しました。
1日2杯以上飲む
乳がんは大きく2種類に分類でき、それは転移しやすい「浸潤性」とそれ以外の「非浸潤性」です。まず研究グループは浸潤性乳がんのスウェーデン人1,090人に対して調査を行い、コーヒーの効果を調べました。
その結果、1日2杯以上のコーヒーを飲む人は、1杯以下の人と比較して浸潤性乳がんが小さく、がん細胞にエストロゲン受容体がある人の割合が少ないことがわかりました。
がん細胞にエストロゲン受容体がある人の治療では、「タモキシフェン」という薬を使用します。この薬はエストロゲン受容体にエストロゲンがくっつかないよう阻害する薬です。
タモキシフェンを使用して治療した乳がんの人のうち、1日にコーヒーを2杯以上飲む人は1杯以下の人と比べて転移や再発が少ないことも判明しました。
乳がん細胞をコーヒーの成分が殺した
次に研究グループでは、エストロゲン受容体がある乳がん細胞と、ない乳がん細胞を専用の容器で培養し、そこにカフェインやコーヒー酸を加えて効果を確認しました。すると、エストロゲン受容体の有無にかかわらず、カフェインもコーヒー酸も明らかに乳がん細胞の増殖を抑えたのです。
さらに詳細に調査すると、エストロゲン受容体がある乳がん細胞に対して、カフェインはエストロゲン受容体そのものの数だけでなく、「サイクリンD1」という細胞の増殖に欠かせないたんぱく質の量を著しく減少させることもわかりました。
また、カフェインはエストロゲン受容体の有無にかかわらず、乳がん細胞の増殖に関係するたんぱく質である「インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)」と「pAkt」を減少させました。
このようなカフェインの効果によりがん細胞はうまく増殖できなくなり、細胞の死滅につながったのです。
今回の調査結果では、乳がんの人を対象にした調査でも、培養した乳がん細胞に対する実験でもコーヒーには乳がんを抑制する効果があるだろうと言われています。