コーヒーは焙煎したてがいちばんおいしい?
焙煎したコーヒー豆は時間の経過とともに変化します。もちろんどの食品もそうであるように、ある時点を過ぎるとおいしさを感じられなくなります。このおいしさを失っていく過程を劣化といいます。
きっと皆さん、時間が経てば食品が劣化するのは当たり前、と思われるでしょう。では具体的にコーヒーが劣化を始めるのはいつごろなのでしょうか。
焙煎後すぐに劣化が始まる、と考える方が多いかと思います。実際、多くの作り手もそう考えています。ですが、劣化を決めるのは味わう人の主観だということも事実です。
焙煎したてのコーヒー豆と、一年が経過したコーヒー豆とではどちらがおいしいでしょうか?
おそらく皆さん、焙煎したての方と予想されるでしょう。ですが実際に検証してみると興味深い結果が得られます。
両者の味の違いは誰にでもわかるところです。この2つの正体を隠して飲み比べしてもらうと、1年経ったコーヒーの方がおいしいと感じる人がある程度の割合で必ずいるのです。
それは味がわからない人、というのではなく好みの問題です。焙煎したての方を好む人にとっては、一年経ったコーヒーはその分劣化しています。反対に一年経ったコーヒーをおいしいと感じる人にとっては、一年間はよりおいしくなるための熟成期間ということになるのです。
ところで、どうしてコーヒー豆の風味は変化するのでしょうか?
一般的に、コーヒー豆に含まれる油脂の酸化が原因だと考えられています。事実そういった面もあるのですが、コーヒー豆は抗酸化成分をたくさん含んでいるためか、とてもゆっくりと酸化します。私たちが風味の変化を感じるのは、それよりももっと早い段階です。
私たちが劣化と感じる大きな要因は香りのようです。コーヒー豆は焙煎直後から香りの成分が放出されるガスとともに抜けていってしまいます。加えて、残った香りの成分にも化学反応が始まります。香りの総量が減ると同時に香りの質が変わっていく変化を、私たちは劣化として感じているようです。