遠いブラジルの干ばつも人ごとではない時代・・・?
商品作物というのは様々な要因で価格が変動するもの。肥料の価格・人件費・生産時や輸送時に必要な燃料費など。昨今の原油価格の高騰は作物の価格に相当の影響を与えました。
しかし、それらの要因より直接的に影響を及ぼすのは天候であることは言うまでもありません。特に昨今の地球規模の気候変動には、世界的に需要がある大規模生産の作物ほど大きな影響を受けています。
2014年、世界最大のアラビカ種生産国であるブラジルは「数十年に一度」という干ばつに数度襲われました。そのためにコーヒーの木が弱ってしまい、2014年の生産高が落ちるのみならず、来年への影響も心配されています。
コーヒーの木は多年生植物のため一度弱ると回復に時間がかかり、また、簡単に植え替えるというわけにもいきません。ブラジルの干ばつが続くと今後数年間にわたりコーヒー豆相場が高止まりになるのではないかとの懸念が広がっています。
需要が大きく供給が落ちたならば価格が上がるのは理の当然。全世界の1/3のコーヒー豆を作っていたブラジルからの供給が減ったために、2014年の10月にアラビカ種のコーヒー相場は2倍にまで急騰しました。ブラジルはいわば、原油におけるサウジアラビアと同じような立場の国。ブラジルのコーヒー不作はそれだけ大きな影響があるのです。
2014年10月6日のICE先物取引所のアラビカコーヒー1ポンド(約453グラム)あたりの相場は一時は9.2%までの上昇を見、終値は6.9%高の2.2080ドル。これは2012年2月以来の高値でした。ボストンの投資会社のアナリスト、ハリシュ・スンダレシュ氏は来年になってもこの傾向は変わらず、1ポンドあたり2ドル~3ドルの幅で推移するだろうと予測しています。
コーヒー豆を大まかに分けるとロブスタ種とアラビカ種。主にベトナムやインドネシアなどで大量生産されており、インスタントコーヒーや缶コーヒーなどに使われる安価なロブスタ種に対し、「モカ」「マンデリン」など名前が名前が付いているような豆のほとんどはアラビカ種です。
この価格急騰の直撃を受けたのが世界規模のカフェチェーン・スターバックスや、大手のコーヒー豆販売会社フォルジャー・コーヒー・カンパニーなど。これらの企業はすでに商品の値上げを敢行しています。
特に、これまで小幅の値上げを数年ごとに繰り返してきたスターバックスに対して、フォルジャー・コーヒー・カンパニーの値上げは3年ぶり。スーパーマーケットや、大手ドーナッツチェーン・ダンキンドーナツに卸している商品を平均9%も値上げしています。
日本のスターバックスも2014年10月1日に各商品を10円程度値上げしました。スターバックスはこれまでもコーヒー豆の価格変動に伴い、かなりシビアに値上げを行ってきています。今後の状況によってはさらなる値上げがあるかもしれません。
遠い地球の裏側の国の干ばつも、日本人にとっても人ごとではない時代です。グローバル化というのは良い面だけではなく、こうしたリスクがあることも頭に入れておく必要があるかもしれません。