エスプレッソの歴史やエスプレッソドリンクの種類や違いなどについて

スターバックスが日本に進出して久しく、日本にもシアトル系のエスプレッソドリンクがすっかり定着したかのように勘違いしていましたが、銀座に1号店が開店以来18年経った2014年、スターバックスジャパンは突然スターバックスラテの味をリニューアルしました。

このリニューアルは日本だけに限定したもので、それまでアメリカの焙煎所で焙煎されたものを日本で焙煎した豆に切り替え、ミルクも変えて、日本人の口にあったものにするというもの。

私は深煎りのコクがあって強い味のコーヒーが好きなので、手頃な値段で私好みの味を味わえるスターバックスを愛用していました。

しかし、リニューアル後のスターバックスラテは、それまでのガツンと来る強さがなく、コーヒーの味はぬるく、脂肪分が多いものに変えたという牛乳の味にぼかされたものになってしまっていました。

しかし、リニューアル後のスターバックスラテは国内ではおおむね好評のよう。

日本人は「強い味」が苦手です。カレーだろうが四川料理だろうがなんでもぬるい味にしてしまいます。私はこのリニューアルで「ああまた外国文化が“日本化”されてしまった」とがっかりしました。

おそらく大部分の日本人はエスプレッソの味を受け付けないのかもしれません。

今、軽い焙煎の豆を使うサードウェーブ系のカフェが受けているのは、単にいつものような目先の新しいものに飛びつく性質が出ているという以上に、味の面でも日本人に合っているからでしょう。

とまあ、日本人の中では例外的に「強い味」が好きな者からの愚痴で始まってしまいましたが、エスプレッソというのは名前だけ知られているわりにはそれがどのようなコーヒーなのかしっかり理解している人はあまりいないでしょう。

まあ、日本に伝来してから1500年は経とうという仏教もまともには理解されていないのだから、伝来して数十年のエスプレッソが理解されていないのは当然かもしれません。

エスプレッソの歴史

エスプレッソの歴史をたどると、フランス皇帝ナポレオン1世につきあたります。1806年、ナポレオン1世はフランス及び支配地に向け「大陸封鎖令」と呼ばれる勅令を発しました。

これは、トラファルガーの海戦でイギリスに敗れたナポレオン1世が、支配地とイギリスとの交易を禁じ、経済封鎖によりイギリスをいわば干乾しにしようとしたもの。

イギリスは大陸封鎖令が発令されるよりも先に、フランスの貿易を邪魔するために海上封鎖をしていましたが、大陸封鎖令後にそれを強化。

具体的には、イギリス海軍が海を制し、個人艦船には「私掠船免状」を与えてフランスへの交易船などを襲わせました。私掠船は海賊ではないという主張もありますが、やっていることは海賊行為です。

その結果として欧州に熱帯植民地からの産物が届きにくくなります。コーヒー、砂糖などもそれに含まれていました。

当時コーヒーはすでに欧州で広く好まれた嗜好品となっており、イタリアにも普及していました。しかし、イタリアもナポレオン1世の支配地の一つであったので、コーヒー豆が不足するようになります。

そこでローマのあるカフェのおとっつぁんが小さなカップでコーヒーを提供。値段も低めに設定したために好評となりました。

この「小さなカップ」というのが、エスプレッソを注ぐ容器である「デミタスカップ」の始まりです。

しかし、大陸封鎖令というのはフランス国民にも超絶に不評の政策で、結局のところ大失敗してナポレオン1世は失脚。コーヒーの流通は回復したはずですが、その後もデミタスカップでのコーヒーの提供は続いたようです。

ところでナポレオンはデミタスカップで「カフェロワイヤル」を飲むのが好きだったとか。調べると1世説と3世説があるんですが、いずれにしても自分らのせいでそうなったのに気楽なものです。

19世紀というのは欧州でのコーヒー発展期で、例えばサイフォン式の原型はこの時代に考案されています。

ただ、イタリアでは一杯ずつ粉を小さな鍋で煮出すトルコ式が好まれていたよう。つまりもともとイタリアでは濃厚なコーヒーが飲まれていたわけです。

大陸封鎖令が下されてからほぼ100年後、イタリアでは蒸気の圧力でコーヒーを抽出する機械。つまりエスプレッソマシンの原型が発明されました。この機械を発明したルイージ・ベゼラは、すでにそれで抽出したコーヒーをエスプレッソと呼んでいました。

筆者はこの歴史を知るまでは、エスプレッソマシンの原型は八角形の縦長金属ポット、所謂直火式エスプレッソメーカー「モカエキスプレス」が先にあり、その後機械式ができたものと思い込んでいました。

ところがモカエキスプレスはベゼラの機械より30年ほど遅れて登場しています。つまりこれは、機械でなければ作れなかったエスプレッソを家庭で手軽に作れるようにと考えられたものなのかもしれません。

あとは時代の推移とともにエスプレッソマシンも高機能化、小型化していきました。といっても、よほどエスプレッソ好きでなければ家庭用エスプレッソマシンなんて買う人いませんよね。

安いものでも1万円ぐらいはしますし、それに対してペーパードリップなら100均でドリッパーもフィルターも買えます。

エスプレッソには大量に砂糖を混ぜる

日本人の中にはなんでもかんでも「そのままの味」を味わわないと通ではないと考えている人がいて、出されたそのままで味わわないと憤慨する方もいます。

もちろんコーヒーの飲み方など人それぞれの好みで好きにすればいいものですから、ブラックでしか飲まないというのでも一向に構わないんですが・・・。

ただ、エスプレッソにはタップリ砂糖を入れて飲むのが普通。

以前ある芸能人がイタリアに行く番組でエスプレッソに砂糖を入れずに飲み、目を白黒させながら「さすが本場」などと言っていたのには大いに笑わせてもらいました。

コーヒーの苦味の成分というのは硬水のほうが溶け出しやすく、つまり同じエスプレッソでも、イタリアで淹れたほうが苦いはず。

そこに砂糖を加えるから甘みと苦味が引き立て合うのであって、そのまま飲んでも苦いだけ。

カプチーノとかカフェラテとかマキアートとかの違い

フランスのカフェオレ、イタリアのカフェラテ、どちらも日本語にすれば「コーヒー牛乳」。

ラテというのは牛乳のことですから「スターバックスラテ」は「スターバックス牛乳」ということになります。イタリアのスターバックスではその辺りはどうしているのでしょうか?

さて、カフェオレについてはおもしろい話があります。

どうもフランスにコーヒーが広まりだした17世紀後半から18世紀ぐらいでは、コーヒーには毒があると考えられていたとかで、牛乳でその毒を中和するという考えのもと考案されたのがカフェオレだというのです。

実際毒があるなら牛乳で中和などできないわけですが、毒があると信じていても飲まずにはいられない魅力がコーヒーにはあったのでしょうね。

名前は同じコーヒー牛乳でも、カフェラテのほうはフランスからカフェオレが伝わって変化したというわけではなく、イタリアで独自に考えられた模様。

真相はともかく現在イタリアではそう考えられていて、カフェラテ発祥のイタリア最古のカフェというのもあります。

そのカフェラテ発祥の店「カフェ・フローリアン」のカフェラテは、客の前までコーヒーとミルクを別々に持ってきて、客の前でカップに注ぐというパフォーマンスが行われるとか。

イタリアではコーヒーは基本エスプレッソなので、カプチーノだろうがカフェラテだろうがマキアートだろうがベースはエスプレッソ。これらの違いは以下の通り。

・カプチーノ

エスプレッソに蒸気で温めたスチームミルクと、蒸気で泡立てたフォームミルクを加えます。

ミルクの割合が多いとカプチーノキアロ、エスプレッソの割合が多いとカプチーノスクーロ、スチームミルク多めだとウェットカプチーノ、フォームミルク多めだとドライカプチーノと、いろいろなバリエーションがあります。

ちなみに、牛乳のかわりに豆乳を使うと「ソイチーノ」になるそう。

・カフェラテ

カフェラテはつまりコーヒー牛乳ですから、コーヒーに牛乳が混ざってればカフェラテ。ただ一応イタリアではエスプレッソにスチームミルクのみを加えたものということになっています。

・マキアート

マキアートはイタリア語で「しみ」という意味。「カフェマキアート」というと、カフェラテよりも少量のミルクを「しみ」程度に加えたもの。逆に、たっぷりのミルクに「しみ」程度のコーヒーを加える「ラテマキアート」もあります。

スタバにおけるカプチーノとかスターバックスラテとかの違い

ついでに、日本ではこちらのほうが一般的であるスターバックスでの違い。まあスタバのサイト見れば出てるんですが・・・。

・スターバックスラテ

エスプレッソにスチームミルクを注ぎ、フォームミルクを乗せたもの。つまり、実はスターバックスラテとはイタリアで言うカプチーノ。

・カプチーノ

スターバックスにおけるカプチーノは、エスプレッソにフォームミルクのみを多めに加えたもの。

・エスプレッソマキアート

エスプレッソに少量のフォームミルクを乗せたもの。イタリアのカフェマキアートに近いです。

・キャラメルマキアート

スターバックスラテにバニラシロップを加え、その上にキャラメルソースをたらしたもの。

この場合マキアート=しみに相当するのはキャラメルソースであって、キャラメル入りカフェマキアートというわけではありません。

こうして見ると、イタリアとスターバックスでは同じエスプレッソベースのドリンクでもいろいろ違いがありますね。もちろん元祖はイタリアなわけで、スタバのほうが「どうしてこうなった」という感じなんですけど・・・。

ですからこの違いを知らずに、スタバ式の知識でイタリアのカフェ文化を語っちゃうと恥をかくことになるので気をつけましょう。

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