急性カフェイン中毒にならないための目安とは
CNNが伝えたところによると、2017年の4月末、アメリカの16歳の高校生が心臓の機能不全で亡くなりました。彼には心臓疾患などはなく、この心機能の不全は、カフェインの大量摂取によるものだと考えられています。
故人は亡くなる直前のおよそ2時間の間に、ファストフード店のカフェラテ、カフェイン入り炭酸飲料の大サイズ、栄養ドリンクを飲んでいたとのこと。
こうしたカフェインによる急激な反応を急性カフェイン中毒と言います。
よく、中毒と依存症を混同している人がいますが、医学的には中毒というのは読んで字のごとく毒にあたったことによる各種の反応を指します。
日本でも以前同様にエナジードリンクの大量摂取により、急性カフェイン中毒を起こして亡くなった人がいました。
カフェインは、脳の「アデノシン受容体」をブロックする働きがあります。
アデノシンは簡単に言えば「疲労物質」とも言える神経伝達物質、疲労時にアドレナリンが分泌され、それがアデノシン受容体と結びつくと、睡眠中枢が働いて眠気を起こし、休息をうながします。
カフェインはそれを阻害するため眠気覚ましになるわけです。
それと共に、ドーパミンやアドレナリンといった体を活性化する物質も分泌。
アドレナリンは、細胞の中にカリウムイオンを引き入れる「ナトリウムカリウムポンプ」を刺激する働きがありますが、一時的に大量にカリウムを摂取すると、ナトリウムカリウムポンプが過剰に働き、血液中のカリウムが必要以上に細胞内に取り込まれて「低カリウム血症」を起こします。
本来人間の筋肉は、通常時細胞外に多いナトリウムと、細胞内に多いカリウムを出し入れすることで収縮したり弛緩したりしています。この場合、筋肉というのは骨格筋のみではなく心臓を動かす心筋も含みます。
低カリウム血症になると心筋がうまく働くことができなくなるため、心臓は上手に拍動できず、それが軽度であれば不整脈が出る程度。
重篤になると最悪の場合は死に至ります。それゆえ、カフェインの大量摂取は危険なのです。
急性カフェイン中毒になる目安として、1時間以内に6.5mg/kgのカフェインを摂取すると50%ほどの確率で発生し、3時間以内で17mg/kgのカフェインを摂取すると100%近く発生するというものがあります。
「/kg」というのは要するに1kgにつきという意味で、17mg/kgというのは50kgの人だと850mgになります。
種類や焙煎度合いなど、様々な条件によって変わりますが、レギュラーコーヒーに含まれるカフェインは100mL中に90mgというのが平均的な値だと言われます。
850mgのカフェインは、レギュラーコーヒーの場合約944mLに含まれます。
コーヒーカップ1杯をおよそ150mLとすると、3時間の間に6杯ものコーヒーを飲まねばならないことになります。さらに、50kg以上の人だと、もう少し余裕があります。3時間の間にコーヒーカップ6杯もコーヒーを飲む人はあまりいないでしょう。
急性中毒を起こすほどのカフェインの大量摂取は、ホットコーヒーを基準に考えればそうそうできるものではありません。
ただ、一気に飲んでしまえるアイスコーヒーや、コカコーラのようなカフェイン含有飲料には要注意。また、コーヒーによく合うチョコレートにもカフェインが含まれるため、食べ合わせにも注意をする必要があります。
とはいえ、これはあくまで急性カフェイン中毒の発症が起こる量。急性カフェイン中毒=死亡ではありません。
致死量となると200mg/kg。
これは、カフェイン錠剤やカフェイン含有量を高くしてある栄養ドリンクの類を大量に飲まなければ摂取することは不可能な分量であり、普通にコーヒーを楽しむだけなら心配するようなことではありません。