薄い味でお馴染みのアメリカンコーヒーが生まれた理由
アメリカンコーヒーといえば、浅煎りのコーヒー豆を薄めに淹れ、大きなカップで飲むのが定番です。薄い分、従来のコーヒーよりも、ゴクゴク飲めるのが特徴。ではどうして薄いコーヒーを飲むようになったのか、これには歴史や土地柄に根付いた理由があったのです。
元々、アメリカではコーヒーではなく、紅茶が主流でした。イギリスのの植民地時代のことです。ですが、イギリスによる植民地政策や重税に怒りを募らせた民衆が、入港したイギリス船に乗り込み、東インド会社の茶箱を海に投げ捨てた「ボストン茶会事件」をきっかけに紅茶の文化は消え去ってしまいました。
その紅茶の代用品として飲まれ始めたのがコーヒーであり、紅茶のように薄くして飲まれるようになったと言われています。
他にも、薄くして飲まれるようになったのには理由がありました。その理由とはなんと「水質」。実は、アメリカ西部の水質はアルカリ性が強く、その水で従来のコーヒーを飲むには、刺激が強すぎて胃腸に悪かったのです。
ですから、コーヒー豆を浅く煎ることで、アルカリ水とのバランスをとり、飲んでいたわけ。一方で、東部では西部ほどアルカリ性が強くなかったこともあり、濃い目のコーヒーが飲まれています。
以上のことから、アメリカで薄いコーヒーが飲まれるようになったのですが、これを流通させるに至ったのは、なんといっても経済的なことでしょう。コーヒーが飲まれるようになった頃は、まだまだコーヒー豆が高値だった時代です。そんな高値な豆を合衆国全土に広めるとなると、考えられるのは「いかに安く済ませるか」ということ。
豆の売買は、重量単位で行われますから、焙煎による重量減りが少ないものの方が都合がよく、また焙煎後の時間経過による味の劣化が目立ちにくいものを優先しました。それが、浅煎りだったわけです。
このように、歴史や、土地柄における水質、そして経済的なことから、アメリカで薄いコーヒーを飲むようになったのです。